◆売らない店舗へ◆
私が大学のころ丸井と言えばデザイナーズブランドを揃え丸井カードで月賦払いが出来重宝した思い出がある。そんな丸井グループが店舗で売らない店に大転換しようとしている。時代の最先端をいつも行く丸井だなと思える出来事である。
有楽町丸井にはオーダースーツを手掛ける「ファブリックトウキョウ」が入っている。交流サイトやネットを通じて顧客と直接つながるD2Cの人気ブランドである。
このようなD2C(ダイレクトゥーコンシューマー)と呼ばれるネット通販企業を積極的に誘致している。店頭では丁寧な積極でお客様のデータを蓄積して商品開発に活かしてマッチしたものを提供する。
あらゆるものがネットで買えてモノを売るだけではリアル店舗は存続できない時代に突入した。
店舗は体験型店舗に変わりつつある。
AIカメラを駆使してお客様の行動を追い
お客様が商品の前に何秒滞在してスタッフが商品デモを行った回数から販売まで至った割合など分析して改善策を構築していく。
迷ったお客様に対してネット通販で割引クーポンを配信することも可能になる。
売上至上主義ではなくリピータ―客や新規をどれだけ掴んだかをテナントの評価にして未来型の店舗を模索している。
丸井はカード会員が720万人おり伊勢丹三越の倍以上いる。倍以上のデータ蓄積が可能である。データ蓄積がモノをいう時代になってきた。カード会員の属性も含めた消費行動が把握できカードとの情報を紐づけることが可能である。
デジタルトランスフォーメーションの本格的な幕開けとなった。
コロナによって時代が変わり売り方も変わって行く。
◆勇気ある変革で復活◆
2006年「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が日本に上陸して大人気でブームとなり長蛇の列が出来ていた。
全国64店舗まで拡大してミスタードーナツの存在が薄れていった感があった。
私自身もそんなに人気あるのならと並んで食べたことも有りました。さすがアメリカのドーナツという感じでかなり甘いドーナツだと記憶している。
あれほど騒がれていたのにブームが去ると誰も並んでおらずいつの間にか店も無くなっていった。
昔ミスタードーナツの対抗馬的なダンキンドーナツがありましたが、あれと同じように撤退してしまうのかと思っていた。
しかしながら、2017年若月貴子氏が社長に就任し、V字型回復を遂げていった。
日本人好みに合わせて甘みを抑えて地域や客層に合わせた。キッズルームを設けたりビジネスマンや若者に合うスタイルに変えていった。行列は要らない日本人に愛される店を目指している。
押し売り商売は成功しない。愛されないと意味がない。
スタバも当初アメリカと同じものを売っていた。パンはパサパサでクリスマスにはターキーのサンドを売っていた。日本の部長が売れないと言っても聞き入れてくれなかったとぼやいていた。
マクドナルドも国によって全く違ったものを提供している。郷に入れば郷に従えと言うことです。
商売というのは、時代に合った、地域に合った愛のある勇気ある変革を遂げないとお客様から見離される。
◆お客様の声を聞く◆
お客様の小さな声も拾っていかないと商売は成功しないものだ。
ちょっとした不平不満が大きなビジネスチャンスになります。
多くの商売では、そのような小さな声をスルーして会社都合・社員都合で物事を進め判断している。
例えば、お味噌はダマになって溶くのに時間がかかるそんな声を拾ってマルコメみそは、2009年に『液みそ』を開発した。2020年には累計出荷数は5000万本となった。日本人の4分の一が購入したことになり、空前のヒットになった。
モノが売れない時代でもお客様の小さな声を拾いお客様に喜んでもらうことを必死に考えているとまだまだ売れることが証明された。
共働きの夫婦が増えて料理に時間と手間を掛けたくない。贅沢な時代になり味の良さも大切になってきた。
お客様の生活スタイルやわがままにとことん寄り添いお客様からこんなものが欲しかったと言ってもらえたら大成功になる。
お客様の細かいニーズをいかに応えるかが大切だ。
◆時代の変化に即した市場開発◆
東京と神戸を行き来しながら生活をしているので、新幹線を乗ることが多い。
何でも見るのが好きなので用事もないのに売店には必ず新しものがないか見に行きます。
私はお酒は一滴も飲めないのですが、お酒のつまみは好きです。地元兵庫県の伍魚福の『一杯の珍極』シリーズはとても興味をそそる。
個々の会社は自社で作らず委託して製造している。企画プロデュースに徹して素晴らしいやり方だ。
私は常々プロデュース業が一番利の多い商売だと言っている。
開発のキッカケが高齢化を見越してさきいかやピーナッツといった硬いモノ中心では頭打ちになると30年前から予見していた。進化し続けて常温で日持ちするドライ展開にしている。味の良さ・贅沢感そして、少量パックでどこでも楽しめることで大ヒットしている。
時代の変化を読みお客様の心理を掴み極めることが大切である。
◆会社を守る鉄則◆
滅茶苦茶厳しかった親父がやってはけない商売を口酸っぱく言っていた。
まずは手形や小切手をもらう商売はするな。売掛金を常とする商売をするな。
現金商売を基本に考え売掛金主体の商売は絶対にするなということです。
売掛金なら入らないリスクを背負うからダメだということです。
絶対、下請け・卸業をするな。立場が弱いので赤字でも仕事を受けなければいけなくなる。赤字で商売をするなら何もしないで寝ている方がいいと言われた。
機会があると何度も同じことを言われ続けてきたので染み付いている。
それには親父が苦労した背景があったからです。
父親は戦後電気の材料や部品、電化製品などの卸し業をしていた。近畿一円に営業所を設けかなり儲けていた。
メーカーが直接卸すことになり卸し業を止めて小売業に転業するか選択を迫られた。
小売業に転身した経営者はチェーン展開して上場をしていた方も多い。
親父は若かったのでメーカーのやり方が気に食わずメーカーと争った。
結局は相手の方が上手で会社を乗っ取られた形になった。
戦後の動乱期を乗り越え色々と経験した中で卸し業や下請けはつらいし、何度も不渡りを食らったと苦労話をよくしてくれた。
飲食業に転身して成功したが私が会社に入ってから不動産賃貸業に大きく舵を切った。
マンション、テナントビル、事務所ビルなどかなりの数を所有し大成功したが阪神淡路大震災で40億以上の損害を被ってしまった。
大手が手を出さない境域で勝負しようと鉄則を決めていた。
繁華街・歓楽街の中にビルがあり様々な人が入居していた。
ややこしいから普通は持ちたがらない。管理も外部委託する所が殆どである。
すべて自分でやることにした。
どこよりも入居率は高く常に100%近かった。何故そんなに高いかと取引銀行に驚かれた。
何故なら本人確認が出来る身分証明者があれば保証人無くても入居できたからだ。それには家賃未納者を自ら追い出す術を備えていたからである。それが出来たので払える能力があれば入居できた。家賃回収率もほぼ100%だった。多くの家主が嫌がる証明者や保証人がいない水商売や風俗関係者も入居していた。今の時代は保証会社を通して手数料を取られてビルを所有しているオーナーが多い。つまり利益率を下げてしまっている。契約者と違うやくざが入居して組事務所として使用された経験もある。引き下がることなく追い出した。
トラブルばかりでしたが経験を積んでいくと追い出す術も巧妙になっていく。
色々経験させてもらい度胸がつきました。
事務所ビルは詐欺師が入り大事件に発展したこともある。
不動産屋の紹介で入居しましたが、初めから胡散臭いと思っていたので毎日様子をうかがっていた。詐欺事件を起こし、ある日突然姿を消した。周りに大きな損害を与えた。私どもは毎日監視していたから損害はなかった。結局その詐欺師は九州で捕まった。
店子が家賃お支払いに小切手を持って来たり手形を持って来たりしても絶対に領収書を発行しない。預かり書しか渡さない。そんな鉄則を守り抜いて商売をしていた。
商売は現金が手のひらに乗ってこそ本当の売上だと叩きこまれたから、現金でないのだから領収書は発行できない。
家賃は自分で責任もって回収作業をやっていた。命がけでやっていたから回収率100%以上でした。
コロナで大変な企業の相談を受ける中甘い経営をしている方もいる。
売掛金が何年も回収出来ていない取引先がある会社もある。
家賃が何年も何か月も振り込まれていないのに放置しているオーナーもいる。
その未回収のお金を取り返すためにいくら売上をしないといけないのかを考えておかないとダメです。
経営者ならば会社を守る鉄則を考え守り抜く覚悟がいる。
鉄則を崩すと崩壊してしまう。
株式会社 Jライフサポート 三條慶八